あなたは、ロシア式サウナ「バーニャ」をご存じでしょうか?
サウナといえば、フィンランドを思い浮かべる方も多いと思いますが、じつはロシアにもサウナに積極的に入る習慣があるのです!
そんな、ロシア式サウナ「バーニャ」について、今回は解説していきます。
ちなみに、フィンランド式サウナについては、以下コンテンツで紹介しています。
気になる方は、ぜひご覧ください。
▶フィンランド式サウナとは?日本のサウナとの違いやサウナショップも
ロシア式サウナ「バーニャ」とは?
ロシア式サウナと言われて、ピンとくる方は少ないかもしれません。
それもそのはず、サウナはフィンランド発祥と言われていますし、「サウナ」という言葉自体がフィンランド語だからです。
では、ロシア式サウナとはいったい何なのか、ここではロシア式サウナ「バーニャ」について簡単に解説していきます。
「バーニャ」とはロシア語で「サウナ」の意味
ロシア式サウナは「バーニャ(баня)」と呼ばれ、ロシアではサウナのことを指します。
フィンランド語の「サウナ」と同じ位置づけです。
ちなみに、この「バーニャ」は、ラテン語の「水に浸かる場所」という意味から来ているという説も。
もし、「バーニャ」や「サウナ」を日本語に訳すとしたら、「蒸し風呂」という意味になるでしょう。
「バーニャ」の歴史は10世紀ごろから
ロシア式サウナ「バーニャ」の歴史は深く、ロシア年代記では10世紀ごろには、既に伝統的な蒸し風呂が行われていたことが記されています。
フィンランド式サウナと同じくらい、バーニャは古くから親しまれているのです。
ロシア式サウナ「バーニャ」の特徴
「バーニャ」は歴史が古く、それだけロシア人の生活に深く根付いています。
そんなバーニャですが、フィンランド式サウナのように日本のサウナとは違う特徴があるのです。
ここでは、バーニャの特徴について解説していきます。
「バーニャ」内はフィンランド式サウナに近い
日本でいうサウナとは、一般的にドライサウナと呼ばれ、サウナ室内は高温低湿になっています。
一方、ロシア式サウナのバーニャは、バーニャ内が中温高湿な環境になっていることが特徴です。
温度 | 湿度 | |
---|---|---|
バーニャ | 40℃~80℃ | 20%~40% |
フィンランド式サウナ | 60℃~80℃ | 20%~30% |
ドライサウナ | 80℃~100℃ | 10%~15% |
フィンランド式サウナも、サウナ室内が中温高湿な環境になっているのが特徴なので、環境はとてもよく似ています。
また、バーニャの仕組みもよく似ています。
フィンランド式サウナの「ロウリュ」と同じく、バーニャ内を温める為の暖炉「ペチカ(печка)」に水をかけ、発生した水蒸気の熱で発汗作用を促します。
「ヴェーニク」と「ウィスキング」
バーニャで忘れてはいけないのが、「ヴェーニク(веник)」によるマッサージ「ウィスキング」です。
ヴェーニクとは、白樺や樫などの枝葉を束ねたもので、フィンランド式サウナでは「ヴィヒタ」と呼ばれます。
水につけて柔らかくしたヴェーニクを、バーニャ内の水蒸気熱で温め、程よく温まったところで全身を軽く叩いてマッサージ。
叩く時の衝撃で全身の血行が良くなり、また発汗作用も促されるため、健康に良いと言われています。
さらに、叩くことでヴェーニクについた蒸気とともに香りが広がるため、リラックス効果もあるのです。
サウナ用語については、以下コンテンツでまとめています。
気になる方はご覧ください。
バーニャは丸太でできた小屋
古くからある伝統的なバーニャは、基本的に丸太などの木造でできた小屋です。
バーニャ小屋の中は、ペチカの置かれた蒸し風呂の部屋と、小休憩をするための待機部屋に分かれています。
蒸し風呂室は、2~3段の段差になっており、タオルなどを敷いて座ったり寝そべったりして過ごします。
待機部屋では、着替えをしたり、休憩中に団らんをしたり。
基本的に、バーニャは友人などと一緒に訪れる場所という位置づけのため、小屋全体にそれなりの広さがあります。
ただし、室内の広さはありながら、天井が低く作られているのも特徴の1つです。
バーニャ内の水蒸気を、よりたっぷりと浴びることができるような構造となっています。
バーニャの魅力はフラットな関係
バーニャは、古くからロシアに伝わる伝統的な蒸し風呂ですが、ただ健康のために利用するわけではありません。
フィンランド人がサウナを社交の場として利用するのと同じように、バーニャもまたロシア人にとっては大切な社交の場です。
ここでは、そんなバーニャとロシア人との関係について簡単にご紹介します。
リラックスして話せる場
日本のサウナといえば、1人でもくもくと楽しむイメージが強い方も多いですよね。
複数人で訪れても、あまり会話はせず、静かに自信と向き合うような利用の仕方がポピュラーです。
一方、バーニャは1人で利用するよりも、親しい友人や仕事相手など、複数人での利用が基本です。
公私混同が当たり前のロシアでは、社交の場で商談が進むということも少なくありません。
バーニャもまた、そのような場として使われることが多いのです。
政治家などがバーニャで重要な会議をするのも、ロシア人ならではの行為。
裸のお付き合いをするバーニャでは、「上下関係のないフラットな付き合いができる」という考え方も、ロシア人は持っているようです。
バーニャにまつわるロシア語
バーニャにまつわるロシア語は、「ヴェーニク」や「ウィスキング」の他に、蒸気を表す「パル(пар)」、バーニャに入ることを表す「パーリッツァ(париться)」などがあります。
また、パーリッツァから派生した「ニーパリシスィア(Не паришься)」や、バーニャから出てきた人にかける「ス リョーフキム パラム!(С лёгким паром!)」というフレーズなどもあります。
- 「ニーパリシスィア」…「焦るなよ」
- 「ス リョーフキム パローム!」…「爽やかなサウナ時間を!」
※日本語訳は諸説あり。
日本やフィンランドでは、サウナから出た人にあえてかけるフレーズはないため、このような挨拶はロシア独特の文化です。
「ス リョーフキム パローム!」と挨拶されたら、「スパシーバ(Спасибо! )」と答えます。
日本語で言う、「ありがとう」ですね!
ちなみに、「ス リョーフキム パローム!」は、ソ連のコメディ映画タイトルにもなっています。
ロシアにはバーニャのワークショップがある!
ロシアには、バーニャの歴史やウィスキングの技術などが学べるワークショップも存在します。
「バーニャ接待」というような言葉を使うほど、ロシアではバーニャの価値が高いため、お金を払ってでも技術を学びたいという人が絶えないのです。
もちろん、仕事だけでなく、プライベートで家族や友人により良いバーニャを提供するためにと学ぶ方もたくさんいらっしゃいます。
ウィスキングを人に施術できるようになると、「ウィスキングマスター」呼ばれるようになります。
そして、有料でウィスキングを施術できるようになると、「パンシック(バーニャマスター)」という呼び名がつきます。
ロシア式サウナ「バーニャ」の入り方
ロシア式サウナ「バーニャ」には、推奨されている入り方があります。
バーニャは、3回入ることを基本としていますが、それぞれ入り方が異なります。
フィンランド式サウナでは特別な入浴方法が無かったので、この辺りは日本のサウナに近い感じがありますね。
ですが、同じ工程を繰り返す日本のサウナと違い、バーニャは入るごとに様々な工程を行います。
ここでは、そんなバーニャの入り方について簡単に解説していきます。
1回目の入浴/ウォーミングアップ
1回目の入浴は、ウォーミングアップ程度にバーニャへ入ります。
5分~10分程度(10分を超えない)バーニャ内の下段で横になります。
そのあとは、待機部屋で少し休憩します。
気になる人は軽く汗を流しますが、1回目の入浴では水をかけたり水風呂に入ったりはしません。
また、1回目の入浴時にバーニャ内へヴェーニクを持ち込んで温めておきますが、まだウィスキングは行いません。
2回目の入浴/ウィスキング
2回目の入浴では、いよいよヴェーニクの出番です。
バーニャ内の中段もしくは上段で、10分~15分程度横になります。
ペチカに水をかけ、部屋全体に水蒸気がいきわたるようヴェーニクで仰ぎます。
水蒸気が十分に部屋中にいきわたったら、いよいよウィスキング。
ウィスキングの時間は、5~10分程度が目安です。
ウィスキングが終わったら、バーニャから出て水風呂に入ったり、水をかけたりします。
3回目の入浴/体を温める
3回目の入浴は、水風呂で冷えた体を温めるのが目的です。
バーニャ内の下段に腰かけて、体が温まるまで数分過ごします。
汗が出るほど入る必要はありません。
体が十分温まったら、待機部屋で体を洗ってバーニャの一通りの流れは終了です。
日本のサウナでは、同じ工程を数回繰り返すので、バーニャの入り方は少し独特に感じるかもしれません。
日本で推奨されているサウナの入り方については、以下コンテンツで紹介しています。
気になる方は、ぜひご覧ください。
▶サウナでよく聞く「ととのう」とはどんな意味?サウナ用語を解説
バーニャはロシア人にとって憩いの場
ロシア式サウナ「バーニャ」には、日本のサウナともフィンランド式サウナとも違った良さがあります。
特に、ヴェーニクを使ったウィスキングや、それを施術するウィスキングマスターなどは、興味深い文化の1つです。
バーニャを体験する機会があれば、ぜひウィスキングマスターの心地よいマッサージを堪能してみてくださいね。